思い出の地ストラスブール
ドイツ国境に接するフランス東端の都市ストラスブールの語源はドイツ語で「街道の街」であり、古代から交通の要衝として栄えた場所です。かつてはフランスとドイツと領土争いが繰り返されたここアルザスには現在欧州議会が設置されており、ヨーロッパ諸国の政治的取り組みを決定する会議が行われている場所でもあります。以前スイスのローザンヌからフランス国内に引っ越そうと思い、ヨーロッパ諸国の地図を広げて眺めていた時に中学生時代の地理の授業で聞いた記憶のあった「ストラスブール」という地名が目に飛び込んできて、そのままの勢いでスーツケース片手にここに移り住んだことがあった。滞在期間はトータルで3ヶ月未満であったが、とにかくストラスブールの人々の親切心と都市の洗練された雰囲気がなんとも心地良く、とっても思い出深い都市の1つとして私の記憶に刻まれていた。幸運にもストラスブールでお世話になったホームステイ先の隣に私と同年代の青年3人がルームシェアをしていて、何から何まで親切に面倒を見てくれたのだ。というのも、その青年たちはテレビゲーム・アニメ・格闘技が幼少期から大好きで、日本から来たこの私の登場を心から喜んでくれたのだ。ホームステイ先で寝泊まりはしていたものの、大半の時間はそのお隣さんの家で過ごし、一緒にテレビゲームをしたり、公園にサッカーをしに行ったり、地元FCストラスブールというフットボール・チームの試合を応援しに行ったり、アルザス地方を車であちこち連れて行ってもらったりと本当に良くしてもらったものだ。その彼らの優しさは友達間の親切さを超えて、なんだか彼らと兄弟として一緒に育ったかのような感覚に陥ることさえあった。イタリア・ジェノバからそのまま南仏を経由してパリに帰るのも面白くないので、ジェノバからスイス・ドイツをひらすら北上し、この沢山の思い出が詰まったストラスブール経由で帰ることも思いついたのだ。
イルミネーションに彩られたストラスブール大聖堂
思い出いっぱいのストラスブールではあるが、実際のところ生活していたのは2009年2月〜5月頃までの3ヶ月未満の期間だったため、一年を通してどんなイベントがあるのかまでは全然知らなかった。という訳で、今回は初めての8月のストラスブール滞在なのだが、ジェノバで出会ったストラスブール在住の青年からこの時期は毎晩ストラスブール大聖堂でイルミネーションによる光のスペクタクルをやっているという話を聞いていたので、ストラスブールに到着後早速大聖堂に行ってみた。このストラスブール大聖堂はヴォージュ産の砂岩を建材として使用されているため、独特なピンク色を呈しているのだが、それがなんともこの洗練された都市の雰囲気にマッチしていて素敵なのだ。ストラスブール大聖堂前に到着するとジェノバで出会ったが言うとおりイルミネーションによる光のスペクタクルが公開されていて、バラ窓の正面の通りには凄い人だかりだった。それもそのはず、この大聖堂に関する宗教的なストーリーを大聖堂正面を一杯に使ってカラフルに表現しているのだが、そのスケールは圧巻の一言だった。20分程のスペクタルを満喫した後、懐かしのプチット=フランス地区の方向に向かってのんびり散歩することにした。プチット=フランス地区とは、アルザスの伝統家屋が密集したという地区のことでユネスコの世界遺産にも登録されているところである。木骨真壁造りの伝統家屋が建ち並ぶこのエリアは、おとぎの国に迷い込んだかのように本当に可愛らしい。まだスーパームーンの翌日だったこともあり、月光に反射したストラスブールの街並みが妖しくも美しく、この独特の魅力を懐かしく感じた一夜だった。
オリジナル記事のURL : https://studiolazuli.com/blog/travel/illumination-cathedrale-strasbourg.html